和77号

 

「和」 9月号(2007年9月発行)
 
巻頭言
 10名の医師(常勤医4名)で、3診体制(日祝は2診)で診療します。
 
 暑かった夏も、そろそろ終わりです。今年もお盆休み返上で、職員一同、外来診療に在宅医療に頑張りました。
 この秋から、新しい医師が加わりました。新しく常勤となる坂本医師は、新進気鋭の内科医師です。内科全般、特に呼吸器を中心に診療します。兵庫医大の小坂医師は、木曜日午前中にリウマチ・膠原病外来を担当します。井口医師(女医)は、火曜、水曜の午前中に、内科と女性外来を担当します。また、阪大循環器からの高田医師は、隔週日曜日午前中に内科、循環器を診療します。
 結局、月曜日から土曜日まで、ほぼ常時3人の医師で診察する体制になります。日曜祝日も2人の医師で診察しています。
 医師不足が深刻な今日、大きな病院でも、内科医が不在の日祝日が多くあるようです。しかし、当院では、日祝であっても豊富な医師団で診療しています。このような診療体制は診療所レベルでは全国的に見ても、おそらく当院だけではないかと思われます。
 当院では、かなり広範囲の病気を診ていますが、今後は各医師の専門分野を明確にしながらも、「病気だけではなく、人間を看る総合診療」を、一人ひとりの医師が心がけながら、より良い医療を模索していきたいと考えています。
 また、訪問看護ステーション「ゆうゆう」の方にも2名の新しい看護師が入職しました。この2ケ月間、スタッフ不足で、大変ご迷惑をおかけしましたが、今後は少し余裕を持って、訪問看護に取り組めると思います。どうぞよろしくお願いします。
 
エッセイ
救急車で運ばれて、えらい目にあいました・・・
 
 診察室に入ってくるなり、「先日、救急車で○○病院に運ばれて、えらい目にあいました」と少し自慢げに話をされる方が時々おられます。そこで、「運ばれたって?自分で呼んだのでしょう?」と、少し意地悪く聞きなおすと、「たしかに私が呼んだのですが・・・」と、少しおとなしくなります。
 確かに、最近は、ちょっとしたことで救急車を呼ぶ人が増え、出動回数はピークを迎えているそうです。普通の風邪で、救急車に乗って平然と当院に運ばれてきた患者さんもいました。タクシー代わりの利用などで出動回数が多くなり、一秒一刻を争う本当の緊急のケースに、うまく搬送できないこともあるようです。外国では救急車は有料(結構高い)なので、日本も有料にしては?という議論もなされています。そうならないように、救急車は、本当に必要な時だけにしたいものです。
また、同じ人が何度も救急車に乗る傾向があるようです。極端な人は、平均1ケ月に1回位、通算2~30回、乗っています。不安が大きいので、救急車に乗るだけで安心するのでしょうか。病院に着くと、入院もせず、お話だけして帰ってくる人もいます。
救急車を呼ぶと、病気に応じて、救急隊員が受け入れ病院を探します。かかりつけ病院や仲介をする「かかりつけ医」があるといいのですが、ないと、本人にとって不本意な病院に搬送され入院となるケースも多々あります。
翌日、診察中に電話がかかってきて、「先生、この病院から出させて下さい」と頼まれることも時々あります。「病院の先生とよく相談してください。私の力で、その病院を出させることは出来ません」と答えますが、「そこを何とか先生の力で出させて下さい」と、懇願されます。翌日も電話がかかってきます。「病院の先生に頼んでも、一通りの検査が済むまで出してもらえません」とのこと。「でも私に言われても無理です。あなたは今、北朝鮮のような外国にいるようなもので、残念ながら治外法権で、こちらからは手出しができません」と、変な説明をします。すると「何でこんなことになったんやろか・・・大した病気じゃないのに。救急車で運ばれたばっかりに・・・」と大泣きしています。「そうですか。でも救急車は自分で呼んでいるんですよ。だから、正しくは、運ばれたのではなく、自分で頼んで運んで頂いたのですよ」と、ここまで出そうになるが、さすがに可哀そうで言えません。
そう、救急車を呼ぶからには、それなりの覚悟も持っておくべきです。救急車を呼ぶと立派な病院に運ばれて手厚い医療が当然受けられると、信じて疑わない方がいまだに多いのですが、現実は違ってきています。医師不足が深刻な現在、大きな病院でも、時間外には、内科医も外科医もいなくて、耳鼻科医が一人だけなんてこともよくあります。平日の昼間でも、搬送病院を探すのに2~3時間を要することは稀ではありません。つい先日も、盲腸(急性虫垂炎)の患者さんが、平日の昼間に5つの病院(大学病院にも)に断られました。家族には「何で、早く病院に搬送しないんだ。なにをモタモタしているのだ。」という感じで怒鳴られました。しかし、できないものは出来ないのです。
今年、医師や看護師が診察室で刺されるという事件が何件か起こっています。被害にあった一人の医師は私の高校の同級生でしたから、他人事ではありません。大変な時代になってきました。私自身も、「今日、診察室で刺されて死ぬかも知れない」という覚悟を頭の片隅に持ちながら診察しているのが、笑われるかも知れませんが正直なところです。診察室に怖そうな男性が入ってくると、一瞬身構えてしまいます。既に、大きな病院では、職員の安全を確保するため警察との連携を深めています。何ていうことでしょう。
こんな時代になってしまったのは何故でしょうか?医者は、それほど悪人なのでしょうか?私の答えは、小泉さんの医療費抑制政策と、医者いじめに走りすぎた無責任なマスコミ、この2人が犯人です。医療を壊した張本人のマスコミが、今頃「なぜ医療崩壊になったのか」なんて報道しているのですから、病識のなさに呆れるばかりです。

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