癌講座

 

     癌 講 座

 

 

  INDEX

 

       1.癌検診は必要か?

    2.大腸ポリープと大腸癌

    3.増加している肺癌

    4.癌Q&A

 

 
1 癌検診は必要か?

 

癌は恐くて特別な病気?

 患者さんのみならず医者も癌は最も恐い病気だと信じ込んでいます。外科医は癌の難手術には特に入れ込みますし、医者嫌いの患者さんもこの時ばかりは医者を神様のようにあがめます。癌以外の病気の時は「説明」といいますが、癌の場合に限って「告知」などという、たいそうな言葉を使います。身内が心筋梗塞や脳卒中で死ぬ事に納得しない人は時折ありますが、癌で死ぬ時は不思議と誰でも納得されます。医学研究でも、癌に関する研究は特に沢山の研究費が貰えます。癌という病気は、トランプのジョーカーのように何でもありの特別な病気として君臨し続けています。
一方、癌以外の病気で亡くなった人を解剖すると、何割かの人に何らかの癌病巣が見つかるという報告があります。また人間は年をとると、誰の体の中でも毎日何十個もの癌細胞が出来ているが、自分の免疫力で次々と排除しているという話もあります。そう考えると、癌は何も特別な病気ではなく老化現象に近いものという気もしてきます。

 

癌で死ぬのも悪くない?

 昔から癌の闘病記ものはよく読まれますが、最近では「癌で死ぬのも悪くない」とか「癌ほどつきあいやすい病気はない」といった風変わりな本も売れています。心筋梗塞や脳卒中は、ある日突然起こり、心の準備のないまま死が到来するのに対し、癌という病気は、手遅れ状態で見つかっても最低3~6ケ月の猶予期間がありますから、その間にやり残した仕事をしたり、死の準備ができるので、まだましだという内容です。そう言われればその様な気もしてきます。

 

癌検診の有効性は?

 癌は、久しく「早期発見、早期治療」と呪文のように言われ続け、医者も患者もこれを信じて来ました。しかしここ数年この呪文の信憑性が少し崩れてきました。すなわち癌検診の有効性を疑う医学論文が続々と出され、その有効性が改めて検討される事態に陥りました。「癌検診の有効性」は非常に難しい問題で、簡単に結論が出せる問題ではありませんが、私自身の経験をまじえて私見を述べてみたいと思います。

 

 

癌検診は必要か?

 

 

 

  癌検診の経済面を考えてみましょう。胃癌検診を例にとれば、、胃透視の検診で約2000人に1人の胃癌が見つかります。検査費用が1人1万円と仮定したら1人の胃癌を見つけるのに約2000万円かかっている計算です。この人が本当に助かるのなら、2000万円という投資は確かに安いのかも知れません。いや、安いと考えるから癌検診が存在するのです。私は検診で胃癌が見つかった人によく「ラッキーですね」と言いますが、これは「あなたのこの小さな癌病巣を見つけるのに何千万ものお金がかかっているのですよ」という意味です。胃癌は頻度の高い癌ですから検診が成り立ちますが、例えば食道癌など、比較的稀な癌では経済的理由で検診が成り立ちません。
このような経済的理由の他に、「癌検診をしてもしなくても癌の死亡率は変わらない」という意見もあります。また、医師会などの『癌検診推進』の大本営発表と真っ向から対立する「癌検診は百害あって一利なし」という意見を唱える異端のお医者さんもいます。よく勉強される患者さんは「一体どっちやねん」と思われるでしょう。
私の結論は単純です。『癌検診は時に役にたつ場合があるので、それを理解し受けたい人だけ受ければよい』となります。癌で死にたくない人は受けた方がよかろうし、癌で死んでも構わない人は受けなくてもよいと言うことです。大げさに言えば、個人個人の哲学で決めて頂いたらよい。それだけの事です。もちろん年齢も大事な要素です。80才以上の人に癌検診を勧めることはまずありません。ですが、やはり癌家系の人は癌検診は受けた方が損はないでしょう。
例えば胃癌検診を勧めても「まだ症状がないからいいです。症状が出たら検診を受けます」といって断る人がいます。これは誤解です。検診は症状が無いときに受けてこそ意味があるものです。検診を受ける受けないのは自由ですが、症状が出て手遅れの癌が見つかっても決して主治医を恨まないで下さい。
現在癌検診があるのは胃癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌などです。各癌の傾向と対策を簡単に述べてみます。

 

癌の傾向と対策

 胃 癌
胃は、癌が最も出来易い臓器のひとつですが、胃袋は胃透視か胃内視鏡検査で、簡単に検査できます。詳細は3月号でも触れました。集団検診ならば、短時間に大勢の人数をこなす必要性と、胃内視鏡は医師でないと出来ない(胃透視は放射線技師でも出来る。)関係上、胃透視しか出来ないのですが、もしかかりつけ医がいるならできれば内視鏡での検査が望ましいと思います。主な理由は、
1 小さな癌も発見できる。 2見逃しが少ない 3 レントゲン被爆がない からです。

大腸癌
大腸癌は症状の出にくい癌といえるでしょう。腸閉塞などの症状が出た時には、癌はかなり進行しています。大腸の検査はレントゲン(注腸)、内視鏡とも準備に手間がかかりますし、検査そのものも恥ずかしい上に苦しいことが多い(最近は改善されてきましたがそれでも少しは苦しい)ので、つい医者側も検査を遠慮しがちです。一般に進行した癌があれば顔色が悪い、痩せてくるなどの何らかの症状が出てきそうなものですが、大腸癌は末期まで顔色が良いことも少なくありません。何十年間も毎月医者に通院していて、大腸癌が発見された時には手遅れの末期状態であった、ということはよくあることです。医者も、よく騙されるのが大腸癌なのです。私は勤務医時代、大腸癌診療に明け暮れていましたから、大腸癌には色々な苦い思い出があります。
しかし、4月号の特集で触れましたように、大腸癌の発見には極めて簡単で有効な方法があります。便潜血検査です。便をほんの少し採るだけですから、苦痛も恥じらいもありません。この検査は受けて決して損のない検査だと思います。

肺 癌 
通常、単純レントゲン写真1枚で診断しますが、実は、これでは見つけにくい肺癌も多くあります。手遅れの肺癌があっても単純写真にほとんど写らないことすらあります。従ってレントゲン写真1枚の検診ではやってもあまり意味がない、という意見が外国から出てきています。最近はヘリカルCTという強力な武器が登場し、このヘリカルCTでの検診が検討されていますが、いかんせん費用がかかるのが難点です。喫煙者は当然ですが、間接喫煙者(家族がタバコを吸う人)も、肺癌には要注意です。

前立腺癌 
これも最近増加している癌です。この癌は、多くの場合PSAという血液検査で簡単にわかります。わざわざ泌尿器科に行かなくても、どの科でも発見できる癌です。当院でも最近2人ほど見つかりました。

乳 癌
 他の癌検診はレントゲンフィルムや検査数値などの資料が残りますが、乳癌検診は医師の触診のみでその場で判定が下される点で、他の癌検診と性格をやや異ににします。従って検診医師の経験、主観ひとつで判定が変わってくる場合もあります。自己検診が大切な癌だと思います。

 

DR.和のワンポイントアドバイス

 他の癌のひと口アドバイス

 

 

 

 

肝臓癌 B型、C型、アルコール性の慢性肝炎の人のみに集中的に出来る癌です。
腎臓癌 血尿が唯一のサインです。腹部エコーで早期癌も発見できます。
膵臓癌 早期発見の難しい癌。血液検査(CA19-9)と腹部エコーで見つかります。
食道癌 助かる癌は内視鏡でしかみつかりません。50才以上の酒、タバコの男性の癌。
胆嚢癌 腹部エコーで見つかります。ポリープの大きさが決め手。胆石持ちの人は注意
脳腫瘍 慢性に徐々に増強する頭痛の人は、1度CTかMRI検査を。 


                                                                  
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