脳・心・低体温療法

2011年09月09日(金)

道端で心筋梗塞を起こして心臓が停止したとしよう。 いわゆる「突然死」だ。
心臓マッサージ、AED,そして救命センターでの低体温療法で助かる人が増えた。
日大病院の長尾健教授の低体温療法を軸とした救命研究を拝聴し、圧倒された。

長尾教授の講演を聞いたのは2回目。
名前は同じだが親戚ではない。
こんな立派な先生と親戚だったら嬉しいのだが。

今夜の長尾教授は、低体温療法の現実と展望を述べられた。
低体温療法の進歩により、後遺症無く社会復帰する人が増えている。
低体温療法が成功するかどうかを暗示するのは血中アンモミア値。

低体温にすると何故いいのか?
虚血・再還流に伴うフリーラジカルの発生が抑えられるから。
低温にすると代謝が低下し、ラジカルも発生しない。

脳は何度がいいのか?
心臓は何度がいいのか?
地道な研究が繰り返されている。

低体温療法は日本が世界をリードしている。
長尾教授が世界のリーダーなのだ。
蘇生術にかける情熱は、看取りを生業とする自分にとって衝撃的。


体温は、バイタルサインとそてのみ捉えてきた。
長尾教授は、体温差を利用した新治療を開発している。
温熱療法の反対だなと思っていたら、後で温熱もやるという。

「温度差医療」
私が勝手に名付けた。


以下、医療者向けの講演サマリー。

【我が国の院外心停止患者の現況とその治療戦略】

駿河台日本大学病院循環器科 長尾健教授

 

【心臓疾患が大半】

日本の心停止の半数は、心臓疾患が原因である。

急性心筋梗塞、急性大動脈解離・・・

社会復帰できたのは、たった6%で

94%は不幸な転帰となっている。

 

急性心筋梗塞の

生存して入院した患者の死亡率は6%と低い。
生きて病院までたどり着けば、まずは助かる。

問題は心拍再開までの時間。

急性心筋梗塞の3分の2は、院外でのVF

院外VF4分の3が、急性冠症候群である。

 

【心肺蘇生法の変遷】

現在、マウスツーマウスは不要になった。

心臓マッサージだけでいい。
できれば1分間に100回以上、理想は120回する。

どこの国でもCPR施行率は3割にすぎない。

CPRのマウスツーマウスがネックになっていた。
人工呼吸をしてもしなくても生存率は変わらなかった。

 

死戦期呼吸のあったグループは

2.5倍蘇生率が高い。
死戦呼吸時に心臓マッサージを始める。

 

様々な検討から、現在の心肺蘇生法は。

胸骨圧迫だけでいいことになっている!

人工呼吸は要らないのだ。

 

日本にAED30万台もある。

人口10万人に対して234台ある。

これは世界で一番高い頻度だ。

しかし市民でAEDの使い方を知っているひとは、極めて少ない。

 

市民がAEDを開始するまでの平均時間=3.6分

救急隊がAEDを開始するまでの平均時間=11.6

その差8分間で、社会復帰率は2倍高くなる。

 

AEDは市民が使うもの!
 そのような意識改革が必要。

 

【低体温療法】

迅速な低体温慮法と、冠再還流療法。

 

エピネフリンを使うと心拍再開率は上がるが

社会復帰率は上がらないというジレンマンがあった。

⇒低体温慮法が脳機能改善に良い(2002 N Eng J Med

 

心拍再開直後から低体温療法をする。

32~34度、脳保護をする。

再還流による障害を防ぐ。

 

低体温療法のEBMとしては、

低体温は早ければ早いほどいい。

救急室では予め4度の水を2ルットル用意しておく

 

VFは、社会復帰率6割。

VFは、3割と半数に低下する。

 

どのような人に低体温療法をすればいいのかは

まだよく分かっていない。

 

アンモニアが200以上の患者さんは予後不良。

200以下が低体温療法の適応になるのでは?

 

血液に直接冷水を入れる機械を長尾教授は開発した。

 

病院到着時に心拍再開していないと社会復帰できる確率は低い

⇒人工心肺を用いて心拍再開させる(60分以内が目標)と、

 20%まで上げることができた。

 

心停止中から低体温療法を開始する試みとして、

Intra-arrest cooling】を治験中

IABPを併用する。

 

PCIが先か、低体温が先かはまだ分かっていない

 心拍が再開して落ち着けば、和温療法がいいかも。

 

低体温療法は、現在、保険適応になっている。

1日10万円。

保険適応は3日間のみ。

3日間が勝負の分かれ目。

 

突然死した、ひとを生き返らせる時代が来た。

医療の進歩は凄い。


街中で倒れても、
AEDが施され、高次救命センターでは

低体温療法で社会復帰まで可能な症例が増えてきたのだ。

それもすべて健康保険適応だ。

日本はなんて素晴らしい国だろう。

国民皆保険制度は日本の宝。
みんなで工夫して守っていこう。

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この記事へのコメント

あまりにも幼稚な質問かもしれませんが、お時間ある時、このブログにもう少し書き足していただけると有難いです。

>低体温療法のEBMとして、
早ければ早いほどいい
4度の水を2ルットル用意しておく

これって、もし家庭で発症したら、救急車の到着まで冷水を作って(冷蔵庫の氷で)脳を冷やすと何か効果があるということですか。効かなかったとしても害はない?
自分でもそんな訳ないでしょと思いながら、この文の示唆するところに関心大です。

Posted by 梨木 at 2011年09月09日 06:32 | 返信

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